骨盤臓器脱とは子宮、膀胱、直腸などの骨盤内にある臓器が膣のほうから下垂し、でてくる病気の総称です。以前は、子宮脱、膀胱脱、直腸瘤などといわれていましたが、一つだけの臓器が下垂してくることはすくないためにまとめて骨盤臓器脱と呼ぶことが多くなっています。
膣から下がって膣の外に出てくる臓器というとみなさん、子宮が一番多いと思っていますが、意外にも最も多いのは膀胱です。さらに意外にも直腸が下がって出てくる人もかなり多くみられます。その理由は子宮は膀胱の上に乗っかるような位置にあり、下垂はしますが、でてくるのは膀胱が多いことになります。以下の下垂して膣の外に出てくる臓器の割合を示します。
まずはじめは出産により骨盤底筋がゆるむことが多いといわれています。それに肥満や便秘などの慢性的に骨盤底筋に負担がかかるような状態になると骨盤底筋がさらにゆるんできます。閉経により女性ホルモンの低下も骨盤底筋のゆるみの原因となります。
出産によって大きく引き伸ばされた骨盤底は、3カ月くらいかけて徐々に元に戻っていきますが、完全に元通りに戻らないこともあります。閉経する頃になり、女性ホルモンの分泌が少なくなると、骨盤底の支えの弱さが症状として出てきます。
骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱脱、直腸脱)
聞きなれない病気ですが、非常に多い病気です。スウェーデンの調査では出産経験者の44%に骨盤臓器脱が認められると報告されています。また米国の調査では80歳までに9人に1人が骨盤臓器脱または尿失禁で治療が必要になるといわれています。このように骨盤臓器脱はありふれた病気であるといえます。
骨盤臓器脱は、ほおっておいても自然によくなることはありません。いつかは治療が必要になります。下がった臓器はもとにはもどりません。
臓器が下がることで「困るなあ」「いやだなあ」「気持ち悪いなあ」と思うようになったら受診されるとよいとおもいます。この病気は生活の質にかかわる病気です。それで患者さんの自覚症状が最も重要です。しかしながら自分で出てくる臓器を触れるくらいになると自然にはよくならないので、一度専門の先生にみてもらうとよいと思います。
ペッサリーという7cmくらいのリングを膣内にいれて臓器が下がってこないようにする方法です。ただしこの方法は骨盤臓器脱を根本的に治す治療ではありません。あくまでも対症療法です。
ペッサリー入れたままにすると、はずれなくなることがあるので、ペッサリーはだいたい3ヶ月毎の交換が必要になります。さらにペッサリーが膣の壁を傷つけて出血したり、感染をおこしたりすることがあり、長期的な骨盤臓器脱の治療としては難しいことが多いです |
Prolift(プロリフト)型のTVM手術は2000年に、フランスで開発された骨盤臓器脱の新たな術式です。この手術は、そけいヘルニアの治療で一般的に使用されるポリプロピレンメッシュを用いて、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱脱・直腸脱)を治療します。メッシュを用いた手術のなかで最も多く行われており、有効性が高いといえます。欧米では近年広く行われるようになっておりスタンダードな治療として確立しつつあります。
また、日本では認可されておりませんが欧米ではElevate(エレベート)という経膣メッシュキットが低侵襲な治療として高く評価されております。我々はこのエレベートと同じメッシュの形状を用いて、これまでのTVMの手術を組み合わせることで、エレベート型TVM手術を確立しております。このエレベート型TVM手術は中等度の骨盤臓器脱に対しては低侵襲な治療として有用です。
経腟メッシュ手術の特徴・特徴再発が少ない。・子宮を取ることなく子宮脱、膀胱脱、直腸脱を同時に治療することができる。 ・膣壁を切開、剥離してメッシュを入れるだけなので、臓器を切除せず負担が少ないため、入院も短期間。 ・合併症が少ない。 ・健康保険適応である
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腹腔鏡を用いた腟仙骨固定術 (Laparoscopic sacrocolpopexy,LSC)治療の特徴<利点>・膣をさわらないので性交渉に対して影響がほとんどない ・痛みが非常に少なく出血が極めて少ない ・再発が極めて少ない ・股関節に病気があり、開脚制限があっても対応可能 <欠点> ・手術時間がやや長い(約4時間) |
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